ミヒャエル・エンデの『モモ』に道路掃除夫のベッポじいさんという人物がいる。
「とっても長い道路を受けもつことがよくあるんだ。
おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。
そこでせかせか働きだす。
どんどんスピードをあげてゆく。
ときどき目をあげて見るんだか、いつ見てものこりの道路はちっともへっていない。
だからもっとすごいいきおいで働きまくる。
心配でたまらないんだ。
そしてしまいには息が切れて、動けなくなってしまう。
こういうやりかたは、いかんのだ。」
まさにこんな心境で畑を動き回ることもある。夜中にふと目が覚めて、あれこれやっていないことが頭を駆け巡ることも。
ベッポじいさんは続けてこう言う。
「次の一歩のことだけを考えるんだ」
「すると楽しくなってくる」
「ひょっと気がついたときには、一歩一歩すすんできた道路が全部終わっとる。
どうやってやりとげたかは、じぶんでもわからん。」
「これがだいじなんだ。」
一発逆転はない。いつも一歩一歩。